怒りの感情をコントロールする

実践考察シリーズ

現代において怒りの感情は生まれやすくなっている

現代人の生活環境は非常に多様で複雑になってきています。人との関りも同じことが言え、電子ツールの普及も相まって様々な方法でコミュニケーションを図れるようになってきました。

人間関係が複雑になると必ずと言っていいほどついて回るのが、対人トラブルです。その相手は様々で、家族、友達、恋人、上司、同僚、後輩、お客様、などが挙げられますが、場合によっては見知らぬ相手との間でトラブルに発展することもあります。

そもそも”怒り”というのは、理想と現実のギャップにおいて引き起こされるとされています。ここで言う理想というのは「○○してほしい、○○であってほしい、○○であるべき」といったもので、現実は「○○できない、○○とはならない」といった具合です。

例えばコミュニケーション面において、相互的に理解(相手の言っていることがわからない、自分の言っていることが伝わらない)ができないと、ストレスを感じ、それが次第に”怒り”という感情になりがちです。赤ちゃんが親に対して自分の不快感を言葉にして伝えることができず、泣いたり叫んだりするのもこういったプロセスからきていると言えば伝わりやすいかもしれません。

“怒り”という感情そのものは悪ではないのですが、その管理方法を誤ると、2次的・3次的なトラブルに発展しやすいため、適切な管理が必要です。そこで、今回は「アンガーマネジメント」という考え方について触れてみたいと思います。

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントは、怒りの感情とうまく付き合うための心理トレーニングとして、1970年代にアメリカで生まれたそうです。怒らないことを目的とするのではなく、「怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになること」を目標としています。
(出典:日本アンガーマネジメント協会)

怒るということは悪いことではないのですが、上記の通り、適切に扱うことができないと、新たなトラブルを生む要因にもなります。また怒るというのは非常にエネルギーを使う行為で、ひとしきり怒った後に言いようのない疲労感を感じたことがある方は珍しくないと思います。

アンガーマネジメントを知ることで、怒りについて正しくコントロールし、円滑な人間関係を築けるようになると、とても生きやすい社会になりそうですね。

怒りの正体とメカニズムを理解する

ここで一つ例を挙げてみます。

例)子供が自分(親)の言うことを聞いてくれず、声を荒げて叱ってしまった

親が理想とする行動を子供に求めたが、現実はその通りに動いてくれず、そのギャップから親の怒りの感情が引き起こされたという図式が見て取れます。つまり、期待と現実のギャップによって引き起こされた感情や行動ということですね。

怒りというのは、その感情を自覚してから行動が引き起こされるまでに要する時間が非常に短く、イラっとしたのとほぼ同時に何らかのアクションを起こしているケースが多く見受けられます。脳科学的にもこれを裏付けていまして、怒りによって身体が「アドレナリン(興奮のホルモン)の分泌」を行い、これにより「交感神経が興奮」という状態に陥ります。もう少しかみ砕いて言うと「心拍数が上がる→呼吸が浅くなる→頭に血が上る→早口になる(または大声になる)」といった具合で、怒りの感情から引きこされるこれらの行動へ繋がりやすいとされています。

「6秒ルール」と「40秒ルール」で怒りをコントロールする

怒りの感情を鎮める方法として、6秒ルールというのは聞きなじみがあるかと思います。「怒りのピークは6秒までで、以降は徐々に下降していくから、とにかく6秒間は何もせずにやりすごす」的なやつですね。ただ、40秒ルールというのはあまり聞きなじみはないのではないでしょうか。
先ほども述べたように、怒りの感情は6秒を境に下降していきますが、完全に消失するわけではありません。つまり6秒間ではイライラは完全に収まらないのです。そこで第2の手として40秒ルールが登場するわけです。

怒りの感情を引き起こすアドレナリンの血中濃度は、40秒ほど経つとその効力のほとんどが失われるとされおり、40秒以降は交感神経優位の状態から副交感神経優位の状態になり、冷静になれるようです。
とはいえ、相手と会話をしている状況であれば、40秒も無言を貫くのは現実的ではないですよね…(笑)
そこで、6秒ルールと40秒ルールの双方を使い分けられると、違和感なく冷静になれるでしょう。

6秒ルールでは、まず自分の怒りを自覚する為に使うと効果的とされています。怒りの感情自体は悪い存在ではない上に排除できる存在でもないので、適切に扱う必要があることは先ほど述べました。適切に扱うためにはまず怒りの存在を認め、受け入れることです。つまり、怒りのピークに達した状態から、その感情を6秒かけて自覚する作業にあててみてください。例えば、言葉に発さずに心の中で「今自分はすごく怒っている。○○に対してすごく怒っている。とてもイライラしている。」などと自答すれば6秒は割と簡単に経ちます。まずはこの6秒間をかけて怒りのピークをやり過ごします。

次に40秒ルールの出番です。ここでは気持ちを落ち着かせるために時間を費やすといいとされています。ここで主に意識することとしては”怒りの鎮静化”です。先ほども述べたように、6秒間ではアドレナリンは消失せず、あくまでピークをやり過ごせるだけなので、イライラの気持ちはまだまだ残っています。そこで有効的とされるのが深呼吸です。イライラすると心拍数が上がり、呼吸が浅くなりやすいので、深く長く呼吸をすることで、気持ちを静める作業を行います。呼吸法によると、深呼吸では吸った秒数の少なくとも倍の時間をかけて吐き出すとリラックス効果を得やすいとされています。例えば5秒吸ったら10~15秒ほどかけて吐き出すといった具合です。これを2セット行うと大体40秒は経つ計算になります。
(参考文献:樺沢紫苑,精神科医が教える ストレスフリー超大全,ダイヤモンド社,2020年)

まとめ

今回のアンガーマネジメントは数あるうちの一つの方法でしかなく、他にも様々なコントロールの方法があります。人によって合う・合わないもあると思いますので、もし興味があれば他の様々な方法を調べてみるとよいかもしれません。しかし、一番大切なのは、その方法よりも怒りについてプロセスを理解することです。以下に今回の投稿についてポイントをまとめます。

・怒りの感情は決して不必要な感情ではない
・怒りは自身の期待と現実とのギャップにより引き起こされやすい
・怒りの感情をしっかりと自覚する
・適切な方法で怒りの鎮静化を図る

・正しく怒り、適切な行動をとる

いかがでしたか?怒りの感情をコントロールし、適切な行動に移すことができれば、余計なトラブルやいざこざを避け、良好な人間関係を維持できるでしょう。
こういったひとつひとつの積み重ねにより、自分も他人もストレスを溜めない社会に近づけていけるので、是非とも実践して頂ければと思います。